2022年度に開催した展覧会関連ワークショップを報告いたします。
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2022年10月16日(日)に、新版画展関連ワークショップ「ばれんを解きほぐすー道具から知る木版画の魅力」を開催しました。講師には木版画家の磯上尚江さんをお招きしました。
まずは、展覧会担当学芸員による新版画展のミニミニレクチャーで、「ざら摺」や「ごま摺」、「木目ぼかし」「きめだし」「きら摺」などの技法が使われている作品を見ながら、今回のテーマである「ばれん」の働きが新版画の作品表現といかに関わりが深いかを知っていきました。
次は「ばれん」という道具そのものにもフォーカスを当てていきました。
小学校時代など、多くの人が一度は使った経験がある「ばれん」。でも実際にどんな材料でどのようにつくられているのか、自分の手で分解して確かめてみます。
より本格的なばれんの素材や構造については、講師の磯上さんからも詳しく解説いただきました。40枚以上の薄い和紙を貼り重ねるなど、半年以上かけて作り上げられていくばれんの制作過程を知った参加者からは、まるで工芸品のようだという感想も出ていました。
解体するのは誰にでも簡単にできますが、包むのにはしっかりとした技術を必要とするのが「ばれん」です。今回は贅沢なことに、磯上さんが実際に包みの過程を実演してくださいました。朝から湿らせておいた「竹皮」を伸ばし、指先でしっかりと力を入れて押さえ、皮が裂けないように慎重かつ素早くねじっていく。そんな見事な手捌きで包まれていくばれんを、全員で息をのみながら見学しました。
ばれんについての知識と興味が深まったところで、企画展示室へと移動し、講師やスタッフを交えた少人数のグループで作品を鑑賞していきました。「ばれん」というテーマに沿って見ていくことで、普段とはまた少し違う角度での鑑賞ができたという声も聞こえていました。
ワークショップ後半では、「ざら摺」と「ごま摺」の技法にチャレンジしつつ、ポチ袋作りに取り組みました。ばれんを少し傾けるようにして軌跡を出す「ざら摺」と、水分を多めに軽いタッチでふわりと摺りあげる「ごま摺」。どちらも磯上さんの実演を参考にしながら、最初は試すように、次第に大胆に、ばれんを動かしていきました。
それぞれにポイントの飾りも付け足して摺り終えたら、型紙にそってカットしぽち袋に仕立てます。
最後は全員の作品のお披露目会。参加者のお一人お一人からも一言ずつ感想をいただきながら、お互いの作品を鑑賞していきました。
ばれんについて知識を深めるだけでなく、展覧会鑑賞や実際にばれんを握っての制作にも取り組んだ今回の企画。3時間とやや長く盛り沢山な内容のプログラムでしたが、「こんなに展覧会と関連の深いワークショップを体験したのははじめてだった」というような嬉しい感想もお寄せいただきました。
今後も、展覧会や所蔵品への興味関心を深めていただけるようなワークショップを開催して参りますので、ぜひご参加いただければ幸いです。
(報告者:ワークショップ担当 田口由佳)
参加者からの声(アンケートより抜粋)
・ばれんがこんなに手をかけて作られていることを知れたのがとてもよかった。
・ばれんのつくりだけでなく、実際にばれんを使って摺ってみたり、作品もみたりできたのがよかった。
・自分でやってみて、摺り師さんの技術の高さが実感できました。
・学んだことと実物(作品)を見ることがつながり勉強になりました。
・ばれんがここまで奥深い道具とは知りませんでした。丁寧な説明やプリントもとても良かったです。
・コロナ禍ではあるが、人とのコミュニケーションが取れたことや、ばれんを使い色々な技法が体験できたのが良かった。