2021年度に開催した展覧会関連ワークショップを報告いたします。
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2022年2月23日(水・祝)に、千葉市美浜区で銅版画工房エフプレスを主宰されている銅版画家の渕沢照晃さんを講師としてお招きし、常設展関連ワークショップ「ちばしび工房 エッチング、はじめての銅版画体験」を開催しました。新型コロナウイルス感染症がまだまだ落ち着かない中でしたが、感染予防対策をしっかり行った上での開催となりました。
最初に、渕沢さんから銅版画とはどういった技法なのか、エッチングはどのような仕組みで刷れるようになるのなど、基本的なことをレクチャーいただきました。
銅版画への理解を少し深めたところで、まずは銅版の下準備をしていきます。表面の汚れや細かな傷を磨いて取り除き、鏡面のようにピカピカになったら、グランドという防蝕剤を表面へ均一に塗ります。軽く乾かしてから蝋燭の炎で炙って煤をつけると、銅版はみるみる真っ黒に。黒くすることで、下絵を転写したときに見やすくなります。
次に、あらかじめ準備してきてもらっていた鉛筆描きの下絵を、やや圧の弱いプレス機を通して銅版に転写しました。表面うっすらと写った鉛筆の線をあたりにして、先の尖ったニードルで線を描いていきます。
線の引き方や面の表現をする際の注意事項なども渕沢さんからお聞きしながら、ニードルで表面を軽く引っ掻いていきます。しっかりじっくり、あるいはスッキリと。ご自分の作品に合わせてちょうど良いところまで描きこみます。
十分に描けたら、今度は腐食液にチャポン。液に浸けて腐食させる時間の目安は40分です。その待ち時間の間は、同じフロアにある常設展示室へ。当館の所蔵する銅版画作品も含めて鑑賞していただきました。
40分経ったら液から引き上げ、水洗いした後、最初に塗った防蝕剤を落とします。すると、ニードルで引っ掻いた線の部分だけが腐蝕され、できた凹みがしっかり目視できるようになっていました。いよいよ、刷り作業へと移ります。
インクをヘラで銅版の表面に塗り込み、余分なインクは優しく拭き取っていきます。この塩梅で、作品の仕上がりはガラリと変わるので、みなさん試行錯誤されていました。
インクをすり込こんだ銅版をプレス機に並べ、専用の紙をそっとのせます。プレス機のハンドルをクルクル回して圧をかけると…
ついに完成!
この日はお一人につき最大で3枚まで刷れることになっていましたので、納得いくまで刷りを繰り返す方が何人もいらっしゃいました。
最後に刷り上がった作品は、全員で並べてお披露目会を行いました。
参加者の方の作品から、いくつかをご紹介します。
学校や、普段の生活ではなかなか触れる機会のないエッチング。初めて体験される方がほとんどでしたが、どなたの作品も深い味わいのあるものばかりでした。今後も継続的に銅版画のワークショップは開催していく予定ですので、ぜひまたご参加いただければ幸いです。
参加者の声(アンケートより抜粋)
・思ったより綺麗に本格的にできたのでよかった(12歳)
・銅版画について今まで全然知らなかったので、自分でやってみてとても楽しかった(14歳)
・久しぶりに紙とか液タブ以外で絵を描いて新鮮だった(16歳)
・版画はなかなかやる機会がないですが、エッチングは描画に近いニュアンスを持っていて楽しかったです(40代)
・腐食の待ち時間に常設展を見て、その他のエッチング作品を見ることができたのでとても良かった(30代)
(報告者:ワークショップ担当 田口由佳)