千葉市美術館
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恩地 孝四郎
『氷島』の著者 萩原朔太郎像
木版、紙 / 52.9×42.0cm / 昭和18年(1943)




恩地孝四郎(1891ー1955)は東京の生まれ。大正3年から4年にかけて田中恭吉・藤森静雄とともに版画誌『月映』を刊行、木版による抽象作品をはじめて世に問う。以来創作版画界の指導者的存在として、木版画というメディアの可能性に挑み続けた生涯であった。詩作や挿画・装幀にも優れ、活字と版画とが有機的に共存する仕事を遺している。木版による詩作ともいうべき、シャープな形態の浮遊する透明感あふれる作風で知られるが、モデルの内実を映す描写的な肖像版画も多く制作している。

本作は、晩年の詩人萩原朔太郎を描く。木版であることが信じられないほどに顔料が厚く盛られた画面の印象は、木版よりも油彩のそれに近い。やや誇張された顔の凹凸やちぢれ乱れた頭髪、そしてニュアンス豊かなグレイの背景…摺りは十回にも及んだだろうか、その行程を思うと「執着」という言葉さえ浮かんでくる。恩地と朔太郎は旧知の間柄であったが、この作品は1943年、前年に世を去った作家の写真をもとに制作されたものだという。おそらくは写真の映像に自身の記憶を重ねたものだろう、恩地は朔太郎の顔に、まるでそれが彼そのものだといわんばかりに深い皺を刻み込んでいる。眉をしかめて虚空に目を据えた作家の面差しに、対象の核に肉迫しようとする、恩地の凄まじいまでの情熱を感じさせる傑作である。



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