千葉市美術館
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鈴木 春信
鞠と男女
中判錦絵 / 27.4×21.5cm / 明和4年(1767)頃





優雅な装束の若衆が興じていた蹴鞠は、風に流されたのか塀を越えてしまったものと見え、梯子の上から可憐な娘が、彼の手に鞠を戻そうとしている。視線を合わせた二人の、恋の始まりの瞬間を描いた作品と見てよいであろう。春信らしい清廉な叙情性に溢れた恋の図である。

春信は、しばしば京都の浮世絵師西川祐信(1671〜1750)の絵本から図柄を借用して作画をした。しかし、それらは悪意あっての行為ではなく、当時の好事家たちを中心に祐信絵本が人気を得ていたことを基盤に、原図を知っていればなおさら楽しく鑑賞できるという洒落の楽しみに通じる遊び心を持って行われていたふしが強い。

本図においては、図柄の借用とまでは言えないものの、その設定を祐信の『絵本美奈能川』(享保18年〈1733〉刊)から借りてきていることは明らかである。祐信の図では、梯子に上っているのは、娘ではなく若衆で、梅の枝につかまりながら、やはり同じように塀をはさんで、蹴鞠ではなく羽根つきの羽根を、羽子板を持つ娘に取ってやっている。その図には、藤原俊成の「しるらめや 宿の梢を吹かハす 風につけても 思ふ心を」の賛がある。この恋の意を、春信の図に重ねれば、いっそう深い情緒を味わうことができよう。

蹴鞠の輪郭に墨線を用いた版もあるが、本版は、空摺りで質感を出している。



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